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タそのものの複製ではないので、電子テータのプリントアウトを原本として扱うということはかなり便宜的なものと解釈できる。他方で、記録している媒体そのものを証拠として出し、原本だという考え方も決定的な解決にはならないと思われる。そこで、日本の法体系のもとにおいても抜本的な解決をするとすれば、何らかのルールを確立する必要があると思われる。

また、詳細は後述するが、電子公証制度など電子データの証拠価値を高める方策も検討すべきではないか。

 

(2) 損害に対する責任分担の問題

● 電子商取引における責任範囲を設定し、それぞれどの範囲まで負担するのか標準的な契約約款を設ける必要性があるのではないか。

● また、リスク分散の観点から保険等の仕組みを考えるべきではないか。

?@ 取引のプロセスにおいて契約当事者の一方あるいは双方に損害が発生したときの損失負担については、当事者間での損失契約上別段の定めをしないかぎり、民法の過失責任主義による基本的ルールにより処理される。すなわち、当事者の一方が取引契約上の義務に違反して(過失により)相手方に損害を与えた場合にはその損失負担については、民法の債務不履行に基づき解決される。この場合には、事故や障害の原因が特定できることが前提であり、原因を与えた当事者に故意過失があれば責任を負うというのが原則である。

 

?A しかしながら、事故や障害の原因を特定できない場合や、原因を特定できても原因者に故意過失がない場合などはどのように損失を負担するかの合理的な基準がないのが現状である。そのため、取引契約における損失負担ルールに関しては、当事者間の特約によって対応しておくことができるが、あまりに一方的な定めについては公序良俗違反(民法90条)として無効となる場合があり得る。こうしたことを踏まえると、特約事項の中で、どのような義務違反に基づいてどの範囲までそれぞれ負担するかについて合理的な基準を設けることも考えられるのではないか。

 

<モール運営業者の責任範囲>

?B モール事業者の責任範囲については、その形態により大きく異なるところであり、その形態に応じた責任範囲と約款の在り方などについて検討する必要性がある。

 

 

 

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